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■はじめに

そこら辺の民家

工程だけをまとめています。自分は風景や背景をレイヤー効果とかテクスチャとかをバリバリ使ってCG的(?)に描くようなことはあまりしないので、そういうツールの技法的な事を求めている人は見ても意味がないかも知れません。アナログの延長だと思ってください。

※心得として…

偉そうな事を言えるタチではないのですが、絵にアプローチするのに必要なのはデッサン力じゃなくて、物の好き嫌いや興味関心が一番重要である気がします。なので真っ先にデッサン、パース云々を言い訳にして描かない人はまずは苦手なものを好きになることが重要だと思います。大切なのは萌えることです。楽しさを見出さなきゃ上達なんかせんのです。それに嫌いなものより好きなものが多いほうが良いに決まってる(`・ω・)シャキーン

※使用ツール

・PhotoShop7
・SAI

■ロケハン

そこら辺の民家

ネタがないので、たまたま家の周りを散歩していたときに撮ったそこら辺の民家にモデルになっていただくことにしました。民家萌え。

■下書き

下書き

下書きと言えどきちんと描いたほうが実は良かったりするのですが、時間がないのでこの程度で。大まかなアタリを意識して「どこに何を描くか?」「何を主役にするか?」という部分を常に頭に叩き込んでおきます。真夏の狭山丘陵(となりのト○ロの舞台)っぽいイメージで描きたいので、メインとなる家の後ろに大きく雑木林を設け、手前は茶畑にしました。この木造家屋が絵の主人公です。

こういう景色を描く場合パースをつけすぎると逆にカッコ悪いのでほどほどに。

■下塗り

PhotoShopで全体的な色味を意識しながら大まかにかつ大胆に背景色を乗せていきます。今回は植物が多いので緑を基準に塗りました。一応下書きはレイヤー分けして乗算で乗せておきます。あとで下書きごと統合するので、下書きはコピーしてとっておくと良いかも。

で、この段階で、すでにある程度遠近感や全体のバランスが取れている必要があり、思い切ってある程度満足するまで上からガシガシ背景色を乗せます。

ところで、遠くのものを青っぽく描くことで半ば強制的に距離感を出せるのですが(勿論遠近法としてはポピュラーな手法です)、やりすぎると勉強にならないので今回は控え気味に。

なので、極力青を過剰にいれる方法を使わず、「明度や彩度、コントラスト」で距離感を出します。単刀直入にいうと、遠くのものは彩度が低く明度が高い、またコントラストが低い。近くのものは彩度が高く明度が低め、またコントラストが高いです。

まだ詳細部分の描き込みはせず、窓や庭木といったようなパーツ、あるいは軒下のような物体の影の落ちている部分を大まかに描き加えて行きます。特に影が落ちる部分はこの時点で把握しておきます。手前の電柱の影は、茶畑が広々して寂しいので付け足しました。

一番のメインとなる民家から形を整えていきます。この辺からは個人的にSAIが細密描写に向いていて使いやすいので、SAIでの作業に…。早い段階で"らしく"見せるのが大事です。

石垣と草地の境界などを整えていきます。また、石垣自体も水彩ブラシなどで色を乗せて色のバラつきを出していきます。

民家の軒下や雨樋等の萌えポイントは早めに描いておきます。するとテンションが上がります。楽しいのが一番です。自分が風景のどこにグッと来るのか(萌えるのか)は好きで風景を眺めていれば自ずとわかってくるような…。

桜の木が邪魔なので消えていただきました。空が綺麗な三角形で切り取られ構図が安定しました。全ては楽しいアクシデントなんですよきっと…。

木々の陰影ははじめは大まかに。キャラクターの髪の毛なんかは一本一本描かずにある程度塊としてとらえて描く様に、木の葉っぱも同じ。細かな陰影は無視して全体の色から。目安として暗い部分からシルエットを描く様に描いていきます。なお、遠くの木々は明るい色が基準なので、逆に陰を付け足していくように描いています。

良いことを思いつきました!(ボブ調に) 手前が寂しいのでヒマワリに登場していただきました(・ω・) おかげさまで、手前と奥に明確な距離感が生まれて良い感じに。ほら、簡単でしょ?

ヒマワリの色は奥の景色より格段に彩度が高く鮮やかに描くことで距離感を誇張。目の前にあるからって過剰なまでに細かく描くと、メインの民家の主役性を奪ってしまうので、大きめに描いて存在をアピールできればそれでよし。言うなれば、自然物もある程度自分の中でデフォルメ。

石垣に着手します。後ほど描く手前の茶畑の葉や、樹木、雲などにもいえますが規則的になり過ぎないように…。世の中のものは法則的には並んでいますが基本的に不規則(ランダム)です。

民家の外壁、特に左側の壁(妻面)は最もよく見える部分であるためこの時点で早めに詳細を追っていきます。

石垣を更に詳細に描写していきますが、ヒマワリの周りだけは詳細に描かないようにします。でないと、このヒマワリ…石垣に埋まってしまいまい、距離感が失われます。こういう「描かない部分」と「描く部分」の使い分けを実戦で研究していくのが重要かもしれないです。石垣はこの距離なら硬めのブラシで丸く囲むように輪郭や影の部分を追うだけでそれっぽくはなります。ただし、”真っ黒”は絶対避けてください。

ヒマワリの葉っぱがうそ臭いので資料見つつ加筆。知識に捕らわれちゃいけないとは思いますが、わからなかったら調べるっていう姿勢はホント大事。

雑木林の木の枝を浮かび上がらせるようにそっと描き加えておきます。

空が夏らしくなくて微妙だったので雲を入道雲に変え、色も若干濃くしました。コレもアクシデント。

手前の茶畑を描き込んで行きます。茶葉自体よりも列を成して並んでいる様子を重点的に…。茶葉は陰の部分の境界やハイライトの部分だけ重点的に。どうでも良いところは無理に描かないほうが吉。

ヒマワリが寂しがっているので仲間を増やしてあげました。本当は後ろの描きこみにヒマワリが負け始めたので数を増やしてボリュームをつけたオチです(;´Д`)

家のベランダやガレージの屋根を描き入れて、主役の民家自体はひと段落。あとは少しずつバランスを見ながら詳細を描くのみ。シャッターのサビ等は平筆で上から引掻くようにオレンジ色をさっと乗せておしまい。

木の詳細を描く場合も葉の明るいところだけ描写。意識的には漫画でクロベタ入れるに同じ。ハイライトの部分は一部だけに点を打つ感じでわずかに描きます。全体に手を回しすぎるとかなりうそ臭くなるので。そう、やりすぎず必要な部分だけ。

ついでに、奥の雑木林にわずかに青色を入れて空気感を出します。わずかに奥に引っ込みました。こういう作業はPhotoShopが便利。SAIとフォトショを使い分けているのはまるで性格が違い一長一短だから。塗れりゃいいってもんでもない。

ガレージのシャッターを描きますが、直線ツールで綺麗に引くと逆に嘘っぽくなるからコレが不思議。なぜなら世の中のものは意外にもガタガタだったりと…。なので部分的に地道にフリーハンドで。家の壁の目地なんかも同じく。逆に、ベランダなどガタがきていない部分は直線ツールでぴっちり描いてます。

延々と単純作業…。屋根瓦を描いていきますが、あまり極端な陰影やハイライトでコントラストをきつくしない様に。絵全体のコントラストは高めに設定すると映えますが、詳細部分のコントラストを必要以上に上げることは頂けないです。特に遠くの景色の場合。詳細部分はびっしり描きたくなる気持ちもわからんでもないのですが、ほどほどに止めておくという心得は大事。

画像が小さくて良くわからないけど、ひたすら微調整…。パトラッシュ僕はもう疲れたよ。

■\(^o^)/オワタ

完成

物語性を出したいので、家の前の道に人物やボンネットバスなどの、絵の中の住人を描き足してようやく完成。今後も出来れば物語性を風景に求めていきたいのですが、自分はまだまだ苦手で(´・ω:;.:...   ああぁ、物ばっかり描いてないでキャラクター描く機会を増やさないと…。

ところで自分はこうやって風景が好きで好きでたまらなくて風景描いている人間なので、「風景や背景描くのメンドクセ」とか心底悲しくなるのでいわないで下さい(´・ω・`)

■おまけ

自分が良く参考にしているものを列挙してみました。時間があれば電車で出かけるもよし、家の周りをうろつくもよし…とにかく外へ出て本物を見ると良いかも…と言ってみる。わからないことがあったらぐぐるなり、写真撮ってくるなり、スケッチするなりすればいいと思うよ。

※参考

・ボブの絵画教室
・ジブリ映画
・淡彩で描く街角スケッチ  著:服部久美子
・男鹿和雄画集T・U
・東京都美術館・国立ロシア美術館展の図録

2008.03.27 TEDDY-PLAZA/瀬尾辰也
http://theodore.ikebukuro.cc/